最近、「ナラ枯れ」と呼ばれる、クヌギやコナラが急に枯れる被害が

増えて来ています。

被害を受けるのは、「ドングリ」の仲間で、以前はクヌギやコナラが

多かったのですが、今年はシラカシ、マテバシイ、スダジイ、アカガシにも

被害が出ています。

 

 



「立ち枯れしたコナラ」

 

 



 

根元には　　、フラスと呼ばれる木くずが大量に落ちています。

この木くずを出すのが、「カシノナガキクイムシ」です。

直径３ｍｍくらいの小さな孔をのぞいていると、時々中から、

木くずの塊がモゾモゾッと動いて来ます。

以前に一日中、孔を見ていたことがあるのですが、この

モゾモゾっと木くずが出て来るのは飽きないですね、

 

 



 

木くずを押してきたのがこの、５ｍｍくらいの細長い虫です。

「あっ。おじさんこんにちは。今忙しいから話しかけないでね」

 



 

 

 



 

カシノナガキクイムシが孔を開け始めたときは、中でまだUターンをすることが

出来ないので、入った時と同じ向き（後ろ向き）で出て来ます。

 



 

 

翅の先（写真の右側）が角張っているのがオスです。



 

 

翅の先が丸く、背中に小さなくぼみが５個から１０個あるのが、メスです。



 

メスの背中のくぼみは「マイカンギア」と呼ばれる器官です。

カシノナガキクイムシは養菌性キクイムシと呼ばれ、自分が掘った孔の中で

菌類を育て、餌にしています。

マイカンギアには、餌となる菌類の菌糸が付いていて、キクイムシが木から木へ移動するたびに

この菌類も移動していきます。

餌となる菌類には何種類かあるのですが、そのうちの一種「ラファエレア・クエルキボーラ」

（ナラ菌）がナラ枯れを起こします。この菌の菌糸が導管を詰まらせたり、樹木の生きた

細胞の中に侵入して栄養分を吸収するために急激に枯れてしまいます。

 

 

《　裕　》

 

世田谷の植木屋　さくら庭園

樹木医　川瀬　裕一郎